描きたいエピソードに入るまでに間延びしすぎてどうしようもなくなっちゃったいつものパターンです。こっちは完成は見込めなさそう。
まあ…惇趙だし…需要もないし、ね…。
「…お前、何やってんの」
「泡風呂でさァ」
ちょろっとテレビで仕入れやしてね、といつもの軽快な江戸言葉が返ってきた。だだっ広い浴場は、望むと望まざるとそのわかりきった答えを反響させる。いつまでもいつまでも。頭の上でわんわん響くエコーを聞きながら、腰にタオルだけ巻いた我ながら侘しい姿で立ち尽くしていたら、畳み掛けるように、
「知らないんですか土方さん」
ときた。
知識として持ってはいるがね。
土方は思う。
ああいうのはなんだか小洒落たネコ脚付きの真っ白いバスタブから、出るとこの出た美女が脚突き出してるから見どころがあるんであって。
間違っても総檜造りの大浴場で、頭に手拭を載せたアヒル隊長とご同伴した沖田を目の前にして、いいねぇ風情があって、とかなんとか愛でる自分の姿は思いもよらない。
埃くさい市中見廻りをどうにかこうにかやり過ごし、屯所の玄関開けるなり山崎があわてて差し出した冷たい麦茶を廊下を歩くうちにすっかり飲み干し、あとは汗を流してから一服つけよう、それだけを楽しみに浴場へやってきた上司に対して、こんな的確な嫌がらせを用意できるのはコイツ以外にいやしない。
「土方さんも入りやすか」
しかもその嫌がらせは続行中なのだ。
「遠慮しとく」
鬼の副長が肩を落としてシャワーだけ浴びる姿はどことなく哀愁を誘ったが、当の沖田は悪びれる様子もない。両手に載せた泡を吹いたり、アヒル隊長が泡の山に沈むのを見届けたり、それなりに楽しく遊んでいる。
「総悟」
シャンプーは佳境だったが、ふと気付いて土方が振り返った。
「お前どれくらいここにいる」
「……さァ」
あごに当てた指先は白くふやけていた。
それっきりだ。
大の大人が20人入ってもまだ余裕のある大浴場いっぱいにきめ細かい泡を敷き詰めるために、一体沖田がどれほどの時間を費やしたのかは知らない。どれ程の石鹸(泡風呂用のバブルバス剤なんて洒落くさいものが屯所に備わっているはずもない)が文字通り泡と消えたのかも知らない。
土方は泡まみれのまま立ち上がってざぶざぶと湯殿に入り、アヒル隊長を挟んだ沖田の両手をアヒル隊長ごと引っつかんで、山崎を呼んだ。山崎は飛んできて、泡まみれの土方から泡まみれの沖田を受け取った。真っ赤に茹で上がった沖田は湯殿から引き上げられるや床にぺたりと座ったまますっかりおとなしくなってしまって、だから山崎はちっとも苦労せずに沖田を泡まみれの沖田からただの湯あたりした沖田にするべくぬるま湯を頭からざぶざぶ掛けた。
真っ赤な沖田が洗いざらしの、糊がぴんと利いた浴衣でくるまれるのを腕を組んだまま黙って見届けて、それからただ一言、
「寝てろ、バカ」
とだけ命じてから、土方は頭のシャンプーを洗い流す作業に戻った。
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なんで銀魂?! と思われましょうが多分私がいちばんそう思っています。